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【イベントレポート】 「チャレンジする」ことが難しい理由と対応策を理解する-大学生向け 超実践型起業体験プログラム 起業から始まる2ヶ月間 [第2回]

起業を支援する「Startup Hub Tokyo」では、起業を目指す方に向けたさまざまなプログラムを実施しています。2017年8月30日には、主に大学生を対象とした「超実践型起業体験プログラム 起業から始まる2ヶ月間」の第2回が開催されました。

同プログラムは、8月から9月の約2カ月間にわたって展開され、その間に計3回の講義が行われます。8月2日に行われた第1回で、講師の佐々木大也氏は、起業家を目指す受講者に、起業家としての思考や行動のパターンを身につけること、そして、1週間単位で自分の行動を振り返りながら「ビジョンに向けて学習と改善を行う」「新しいことにチャレンジする」「自分の力で稼ぐ」ことを習慣化しようと提案しました。

第2回のテーマは「変化を起こす」です。新たなことへチャレンジする時に感じる心理的なハードルを下げ、乗り越えていくために、どのようなアプローチが有効なのかを考えます。

チャレンジに伴う「リスク」を正しく評価する

起業を目指している人に限らず、多くの人は人生のさまざまな場面で「チャレンジする」ことを求められます。

では、この「チャレンジ」とは、どのような行為を指すのでしょうか。そして、なぜ人は「チャレンジ」をすべきなのでしょうか。普段、あまり掘り下げて考えることがない、これらの問いについて、ある程度時間をかけて考え、自分の中で「理由付け」をすることが、チャレンジのハードルを下げるための第一歩になります。

佐々木氏はまず、受講者に対して「チャレンジ」の定義について質問しました。その回答から、「チャレンジ」には「失敗のリスク」が伴うという共通の認識があることが分かってきました。難易度が高かったり、これまでに経験や前例がなかったりするために、失敗するリスクを伴う行動をチャレンジだと捉えることができそうです。

ここでもう一歩、考えを進めます。では、チャレンジの際にリスクとなる「失敗」とはどのような状態なのでしょうか。失敗すると、チャレンジした本人にとって、どのような不利益があるのでしょうか。

受講者からは「目標に到達できない(失敗する)」ことで、「金銭面や健康面でのダメージを受ける」といったものに加え、意中の相手に告白をして振られた場合を例に挙げながら「つらい」「恥ずかしい」といった精神的なダメージがあるといった意見が出されました。

「失敗によって『恥ずかしい』や『いたたまれない』といった負の感情を抱くというのは、人にとって自然なことです。こうした精神的ダメージは、失敗の不利益として捉えられないことも多いのですが、実はこれが、人が『チャレンジ』できない大きな理由のひとつになっています。失敗によって被る精神的なダメージも、リスクの一部に組み入れておき、うまくマネジメントすることが、チャレンジのハードルを下げるためのポイントです」(佐々木氏)

チャレンジして「変化」を起こさなければならない理由とは?

次に考えるテーマは「なぜ、チャレンジしなければならないのか」についてです。これは「難題」だと佐々木氏も指摘します。しかし、自分の中で「チャレンジ」し続けることに対する正当な理由付けを見いだせるかどうかは、チャレンジすること自体へのモチベーションに大きく影響します。

佐々木氏は、そのヒントとして「生き残るために必要だから」という理由付けを提案しました。

あることにチャレンジするという行動は、自分や周囲の環境に対して「変化」を起こそうとする試みです。少し大きな話になりますが、「変化」は世界における普遍的な「法則」の一部だと佐々木氏は指摘します。

佐々木氏は例として、進化論を唱えたダーウィンのものとされている「強いものではなく、変化し続けるものだけが生き残る」という思想や、物理学における「自発的対称性の破れ」、熱力学における「エントロピー増大の法則」などを挙げながら、われわれが一般的に「安定している」と考えている秩序ある状態よりも、むしろ「変化」し続ける「混とん」とした状態のほうが、世界の「法則」に合っているのではないかと述べました。

「多くの人が意識していないだけで、人が暮らす社会の状況というのは常に変化し続けています。今の時代は、変化の振れ幅が大きく、スピードが速くなったことで、それに気付く人が多くなっているのではないでしょうか。変化が激しい環境の中で、自分が生き残っていくためには、その変化に適応できるように変わっていかなければならない。独立や起業を含む『チャレンジ』は、そのために行うべきなのだと考えてみてはどうでしょう」(佐々木氏)

「目的」と「リスク」を明確化し「他人」と「自分」の課題を切り分ける

ここまでの講義で、「チャレンジ」とはリスクをとって自分の目的を達成するための行動であり、とるべき「リスク」として、経済的、物理的、精神的な不利益が想定されること。そして「チャレンジ」しやすい状況を作るためにはこれらのリスクを越えられる「モチベーション」を持つことが有効だということが説明されました。

ここからはワークショップとして、チャレンジを思いとどまらせる理由となる「リスク」を評価し、マネジメントしていく方法の実践に移りました。

まず、自分が起こしたいと思っている「行動」について、その「目的」と、それが失敗した場合に想定される「リスク」を洗い出します。「リスク」は金銭的なもの、物理的なもの、精神的なもののすべてについて、思いつく限り列挙していきます。

洗い出しが済んだら、それぞれの「解釈」に移るのですが、ここにポイントがあります。リスクのうち「金銭的」「物理的」なものは、事前に損益の計画を立てたり、実施可能な安全対策を行っておいたりすることで、ある程度マネジメントが可能です。一方の「精神的」なリスクは、小さなチャレンジを繰り返し、その「成功体験」を積み重ねることで、障害となることを避けられると佐々木氏は指摘します。

では、「小さな成功体験」を積むためのチャレンジは、どのように行っていけばいいのでしょう。佐々木氏は、改めて行動の「目的」(自分にとってメリットがあること)を確認した上で、その目的に対して想定されるリスクを「他人の問題」と「自分の問題」に切り分けて考えることを勧めます。そして「他人の問題」は考えても意味のないものとして切り捨て、「自分の問題」のみをコントロールすべきリスクとして熟考するのです。

ここでは分かりやすい例として「恋愛」をとりあげてみましょう。今起こしたい行動は「気になっている相手に告白すること」だと仮定します。その目的は何でしょうか。

もし、目的が「とにかく恋人が作りたい」であれば、たとえ特定の相手に告白して、振られたとしても、別の相手を探して告白を繰り返せば良いだけです。相手が告白を受け入れてくれれば、目的は達成されます。ここで、自分の告白を相手が受け入れてくれるかどうかは、大部分が「他人に決定権があるリスク」となるため、自分が考えたところで「目的の達成」において、あまり意味はありません。

しかし、告白によって「特定の人を恋人にしたい」ことが目的の場合は、状況が変わってきます。その人に断られることが、即「失敗」を意味するためです。この場合は、成功の確率を高めるための下調べや準備、アプローチの方法を「自分の課題」として考えることに意味が出てきます。もしリスクの洗い出しの中で、「告白したい相手と共通の知人が多く、振られた場合に周囲との関係が気まずくなる」というリスクを想定しているのであれば「事前に、それとなく周囲へ告白することを表明しておく」といった対策をとることで、失敗時のダメージを軽減することが可能かもしれません。

佐々木氏は、行動の「目的」を明確にすることと、そこで生まれる「感情」をコントロールすること。そして、「他人の課題」と「自分の課題」を切り分けてリスクを評価するというアプローチは、アドラー心理学に着想を得たといいます。

「この方法で、ひとつひとつのリスクを正しく評価し、自分が本当に取り組むべきものだけを浮かび上がらせることによって、やるべきタスクが明確になります。そのタスクを自分のチャレンジとして設定し、こなしていくことが、成功体験の積み重ねにつながります」(佐々木氏)

この方法は、一般的な問題解決だけでなく、起業に向けた「チャレンジ」を行う際にも有効だといいます。一般的に、スタートアップ企業の場合は、まず、企業としての「ビジョン」や「戦略」があり、それを実現するために行うタスクを洗い出すといったことを行います。今回の受講者には「まず、チャレンジするための考え方や行動パターン、タスクの設定方法を身につけてもらい、それから、自分のやりたいビジネスモデルを見つけ出して応用してほしい」と佐々木氏は説明しました。

このイベントの第1回、第2回を通じて身につけてきた「起業家の適正パターン」を、どのように、自分が起こしたい「事業」や「ビジネスモデル」に結びつけることができるのでしょうか。その方法は、最終回となる「Day 3:自身のビジョン・ミッションを(仮)決定する」において説明されます。

・講師

佐々木 大也氏
大学では建築意匠を学び、卒業後クラウドソーシング事業会社に入社しインバウンドマーケティング事業部の立ち上げを行う。その後、webシステム開発会社にて新規事業を担当しつつ、個人事業主として独立。現在は、クリエイター向けシェアハウスの運営や、新規事業向けのプロダクト開発を行う。また、Vilingベンチャーパートナーズ(http://www.vilingvp.com/)取締役に就任し、教育領域の起業家への投資、学生向け起業家教育、STEAM教育事業の創出を行う。

杉崎 存紗氏
上智大学5年生、学生専門コクリエーションデザイナー。大学では首席をとり、最年少で学会登壇。インターン先で企画したサービスが日本e-learning大賞を受賞。やりたいことをもった人を増やすこと目標に、スタートアップ・上海のベンチャーへの参画を経て、現在は高校・大学生専門で10~400人規模のイベントのデザイン・運営を行う。

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