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【イベントレポート】 起業家に必要な「ビジョンに向けて学習と改善を繰り返すための軸」の作り方 -大学生向け 超実践型起業体験プログラム 起業から始まる2ヶ月間[第3回]

「Startup Hub Tokyo」では、起業を目指す方に向けたさまざまなプログラムを定期的に実施しています。2017年9月24日には、主に大学生を対象とした「超実践型起業体験プログラム 起業から始まる2ヶ月間」の第3回(最終回)が開催されました。

同プログラムは、8月から9月の約2カ月間にわたって展開され、その間に全3回の講義が行われました。講師の佐々木大也氏は、第1回目(8月2日)の講義で「起業家としての思考や行動のパターンを身につけて習慣化すること」を、第2回目(8月30日)の講義で「チャレンジの妨げになるリスクを正しく評価してマネジメントしていくこと」を受講生に求めて来ました。

最終回のテーマは「ビジョンに向けて学習、改善を繰り返していく軸を創る」です。これまでに身につけてきた起業家としての考え方と行動の習慣をベースとして、自分が仕事としてやっていきたいことを、実際の「ビジネスモデル」に落とし込み、実現していく方法を学びます。

「自分がやりたい仕事」に合った「働き方のスタイル」を選択する

ビジネスモデルの作り方に進む前に、佐々木氏は、今回の「起業体験プログラム」のコンセプトについて、改めて確認しました。一般的に「起業」というと「新しく会社を作って、事業を始めること」を指します。しかし、今回のプログラムの最大の目標は、受講者が「自分の力で自由に仕事を選択したり、創造したりできるようになること」だと佐々木氏は強調します。

社会の中での働き方には、「経営者」だけでなく「個人事業主(フリーランス)」「サラリーマン」など、さまざまなスタイルがあります。では、これらのスタイルの違いは、何に由来しているのでしょうか。

佐々木氏は「働き方のスタイルの違いは、働く上で何らかの約束をする『契約先』や『契約形態』の違いにすぎない」と言います。同時に、その契約スタイルの違いは「自分が『どんな仕事をしていくか』とは、切り離して考えることができる」とも述べました。

「『働き方のスタイル』を『自分がやる仕事』と切り離せるという感覚を大切にしてほしいと思います。むしろ、やりたいことを仕事とするために、一番ふさわしい働き方のスタイルを選択すると考えましょう」(佐々木氏)

「自分のやりたいこと」を仕事にするためには、絶対に「起業」して経営者にならなければならないとは限りません。今までにない新しいビジネスで世の中を変えていくことが「やりたいこと」であれば、起業して経営者となるという選択が最適かもしれませんが、例えば、特定のスキルをベースに仕事をしていきたければ、フリーランスとして、その都度自分のスキルを必要とする企業と契約するというスタイルも選択できます。また、新技術の研究や実用化などを仕事にしたければ、分野によっては資本力を持った企業の従業員として働いたほうが有利なケースが多いかもしれません。

社会で暮らす人にとって、「働く」ことは人生の大部分を占めます。つまり「何を仕事にするか」「どのように働くか」は、自分の生き方そのものを決定づける要素と言っても過言ではありません。佐々木氏は、本プログラムの受講生に「自分自身が本当にやりたいこと、つまり『人生の目的』に一番ふさわしい働き方を、自分の力で選択できるようになることを目指してほしい」と訴えました。

会社案内でよくある「ビジョン」「ミッション」「理念」とは何か

ここから、いよいよ具体的なビジネスモデルの構築に取りかかります。佐々木氏は「ビジネスモデル」がどのようなものかを説明するにあたり、以下の図を示しました。

図の一番上にある「どう在りたいか」は、いわば会社(あるいは自分自身)の「最終目的」です。これを根幹に、それを実現するための方法について具体化、詳細化していくと、それが段階的に「ビジネスモデル」となり、日々実行すべき「タスク」になっていきます。この階層構造の各項目が文章、あるいは言葉として、他の人に説明できる形にまとまれば、それはそのまま「事業計画書」と呼べるものになるというわけです。

「事業計画」というと、会社を興す人にしか関係のないもののように思われるかもしれませんが、フリーランスであれ、企業の中でサラリーマンとして働く場合であれ、「自分の生き方(働き方)」をプランニングする際には、このフレームワークが応用できます。

ワークショップは、まずこの「どう在りたいか」にあたる部分を「ビジョン(描く世界)」「ミッション(使命)」「バリュー(理念)」に分けて埋めていく作業となりました。

「ビジョン」「ミッション」「理念」というのは、企業の会社案内やウェブサイトにもよく掲載されていますが、それぞれの具体的な意味や位置付けについて考えてみたことはあるでしょうか。佐々木氏は、その違いを以下の図で説明しました。

「ビジョン(描く世界)」は、最終的な目的地にあたります。「戦略」とは、そこにたどり着くための手順や道筋です。「ミッション(使命)」は、「戦略」に沿って目的地にたどり着くために実行すること全般を指し、その個別の内容は「行動指針」によって具体化されます。「理念」は、意思決定にあたって守るべき基準、「ミッション」を実行するにあたって外さない道を意味し、具体的な判断基準は理念から抽出された「価値観」になります。

ドライブに例えるなら「ビジョン」は「目的地」、「戦略」は「道路」、「ミッション」は「自動車」で、「理念」と「価値観」は「ガードレール」のようなものと考えることができるかもしれません。

ビジネスモデルは「4つの項目」を細分化して作り上げていく

「どう在りたいか」が見えてきたら、次は「ビジネスモデル」を形にしていきます。ここでは、自社(自分)の仕事が、

・誰のどんな課題を、どうやって解決するか
・顧客と、どのような関係性を作るか
・顧客に対して、どのように価値を届けるか
・そこから、どのように利益を出すか

を具体化します。もちろん、そのために利用できる「資産」などについても、ここで検討しておく必要があります。ワークショップでは、受講者がそれぞれに、これらの項目を埋めていく作業が進められました。

ただし、上に挙げた4つの項目は「ビジネスモデル」を成立させるために必要最低限の要素であり、それを実際の「ビジネス」として実現可能な物にするには、さらに各項目を細分化して検討する必要があります。

例えば「誰のどんな課題をどう解決するか」であれば「既に代替となるサービスや商品があるか」「市場状況はどうか」「この解決策を市場に提供するタイミングはいつか」といったもの。「顧客との関係性」であれば「ブランドイメージをどう作っていくか」「顧客に対して、他の商品やサービスとの差別化をどう示すか」といったものになります。細分化されたこれらの項目が埋まれば、具体的な「行動計画」や「タスク」が見えてくるというわけです。

これらの項目を形にしていくためのコツとして、佐々木氏は「まずは、深く考えすぎずに、大項目を埋めてしまうこと。自分が今、なんとなく考えていることをそのまま書いてしまってもいいし、気になっている企業のビジョン、ビジネスモデルを流用してもいい。詳細については、後で検討し、行動しながら全体や各部を見直し、洗練させていくこと」とアドバイスしました。

自分の「フレームワーク」を頻繁に見直し、アップデートし続ける

配布された作業シートにある、これらの項目をすべて埋めたところで、最終回のワークショップは終了しました。しかし、このワークショップで作ったシートは、あくまでも「起業家」として一歩を踏み出す、最初のステップに過ぎません。

「今日、短時間で作った事業計画の『下書き』を、これから頻繁に、できれば毎日見直して、細部を詰め、更新していってください。更新の履歴については、捨てずに保存しておき、たまに見返してみましょう。その中で、自分の考えや、周囲の環境が変化していることに気付くことがあるかもしれませんが、その時には迷わずに、その変化をシートに反映してください。そのシートは、自分の最終目的地と、そこにたどり着くための道筋、そして現在地を、客観的に把握し、常に自覚するためのフレームワークです」(佐々木氏)

シートの内容を「計画」や「タスク」に落とし込み、さらに「実行していく」ためのメソッドは、既に第1回、第2回で説明され、受講者たちは課題をこなすことで、それを実践してきました。各自が、自分の目指す生き方、働き方を選択し、実践していく生活は、ここが「スタート地点」となります。佐々木氏は「ここで得た気付きやメソッドを、これからの仕事、起業にぜひ生かしていってほしい」と述べ、2ヶ月にわたるプログラムを締めくくりました。

・講師

佐々木 大也氏

大学では建築意匠を学び、卒業後クラウドソーシング事業会社に入社しインバウンドマーケティング事業部の立ち上げを行う。その後、webシステム開発会社にて新規事業を担当しつつ、個人事業主として独立。現在は、クリエイター向けシェアハウスの運営や、新規事業向けのプロダクト開発を行う。また、Villingベンチャーパートナーズ(http://www.vilingvp.com/)取締役に就任し、教育領域の起業家への投資、学生向け起業家教育、STEAM教育事業の創出を行う。

杉崎 存紗氏

上智大学5年生、学生専門コクリエーションデザイナー。大学では首席をとり、最年少で学会登壇。インターン先で企画したサービスが日本e-learning大賞を受賞。やりたいことをもった人を増やすこと目標に、スタートアップ・上海のベンチャーへの参画を経て、現在は高校・大学生専門で10~400人規模のイベントのデザイン・運営を行う。

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