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【イベントレポート】LEGO® ブロックでやりたいことをカタチにして、起業のアイデアを確かなものに

2018年1月20日、Startup Hub Tokyoでは「やりたいことを形にする! 可視化・共有・発見から始める起業へのファーストステップ」を開催しました。

このイベントでは、前半のインプットタイムで先輩起業家の方々に自身の起業ストーリーをお話しいただくとともに、後半の時間でイベント参加者が、自分の強み・繋がり・やりたいことを棚卸しして、自分のやりたいことをカタチにし、起業のアイデアを定めていくワークショップを行いました。今回はその手法として、個人や組織の価値観やビジョンといった目に見えないものを、手を動かしつつ形にするLEGO®SERIOUSPLAY® という手法を採用。レゴ®ブロックを使って、自身の起業に対する想いなどを参加者それぞれが可視化、言語化していきました。

直面している家事問題こそが解決したい社会課題だった

この日のイベントは先輩起業家パネルトークからスタートしました。最初に演壇に立ったのは株式会社タスカジ 代表取締役社長 和田幸子さんです。

「タスカジ」は和田さんが2014年に立ち上げた「家事シェア」サービス企業です。起業前、富士通でエンジニアとして働いていましたが、第一子出産後フルタイム勤務で復職したら、家事と仕事との両立に悩むことになりました。

「社会的にも女性の活躍が期待されて共働き家庭が増える中、『家事の担い手がいない』『どうしても女性にしわ寄せがいく』という事態を自ら体験して、このまま家事に手をとられ続けたら自分のキャリアが作れないと葛藤しました」

と、和田さん。当時主流だった家事代行サービスは価格が高止まりしており、周囲のワーママ仲間も“とても手が出せない”と嘆いていました。起業には以前から関心があり、社会課題を解決したいと考えていた彼女にとって、自分の直面している家事問題こそがそれでした。

この家事を、シェアリングエコノミーの発想で手伝ってほしい人と手伝ってあげられる人でシェアしたらどうかと考え、生み出したのが「タスカジ」です。利用者は一時間1,500円からとリーズナブルに使えるのが特徴で、同社が提供するサイトでは「どんなこと」「いつ」「どんな人」に手伝ってほしいのかを入力することで、求めるタスカジさん(ハウスキーパー)を検索できる仕組みになっています。タスカジさんにとっても、料理の得意な人は料理に、片付けるのが得意な人は整理収納にと、自分の持てる能力を生かして働きたい時間に働ける利点があります。“伝説の家政婦”としてテレビ番組で最近よく取り上げられているのは、同社のタスカジさんだそうです。

日本の大企業を辞めずにパラレルキャリアを築く

次に登場したのは高嶋大介さんです。ユーザー・エクスペリエンスデザイン、デザイン・リサーチ等の分野に造詣が深く、現在、富士通のマーケティング部門でデザイナー職に就いています。

2014年、富士通は東京・六本木に共創プラットフォーム「HAB-YU」を開きました。人「Human」・地域「Area」・企業「Business」(=HAB)を多種多様な方法で「結う」(=YU)ことで新しい価値を創ろうと同グループのデザイン活動の取り組みの一つですが、このプロジェクトにかかわった高嶋さんは、企業と企業のつながりが根本的に変わり始めていることを実感。ゼロからイチを生むような変化を起こすにはビジネスありきではなく、さまざまな人々がもっとゆるやかなつながりにつながり、自由に会話できる場を作ることが必要、と考えるようになりました。

しかし、高嶋さんには守る家族があり、辞職して起業するリスクは冒せませんでした。人事部門に構想を打ち明けて相談したところ、「それはむしろ実現すべきだ」と想いを理解してくれ、副業として会社を立ち上げることになりました。そして2017年6月、ついに一般社団法人INTO THE FABRICを設立。ここで、イベントやワークショップを通じての参加者との対話の場の企画・運営支援及び対話を通じてインサイトを得るリサーチを行うプロモーション・リサーチ事業、ゆるやかな場を作れる人材を育成します。デザイン思考や対話の姿勢、プログラム企画力を通じて場のデザイン力をつけるための基礎スキルを教える人材育成事業、ゆるやかな関係を通じて、地域や社会の発展に貢献する事業などを行っています。

現在、注力しているのは”100人カイギ”というプロジェクトで、その地域で働いている面白い人を毎回5名招待し計100人になったら終了というゆるやかなコミュニティ作りの支援。すでに東京都港区、渋谷区などで開催されており、高嶋さんにとって人と人がつながり、後に参加者同時でプロジェクトが起きていることが楽しくて仕方がないそうです。

「オープンイノベーションの時代で、企業と企業の新しいつながりが重要と言われますが、いつも最初につながるのは個人。この活動によって社会が少し変わるのではないか、日本にももっとできるのではないか、そう期待しています」(高嶋さん)

ためになるアドバイスが満載のパネルディスカッション

続いて、和田さん、高嶋さんをパネリストにトークセッションが行われました。

なぜ起業しようと思ったか?

高嶋「会社では仕事の役割が細分化されており、自分の活動できる範囲が限られています。このまま30年間サラリーマンを続けてどこまで行けるのか、GoogleやAmazonといった企業が台頭する中、大企業といえど未来は安泰ではないのではないかという危機感がありました。社内だけではなく外にもヒントがあるのでは?社会の変化に備えなければいけないと考えたのと、やりたいことが会社の規模や方針とは違い、小さく試すということが難しかったので起業で実現しようと考えました」

リスクは考えなかったのか?

和田「会社を辞める前にリスクを棚卸して、リスクヘッジする方法を入念に検討しました。起業は失敗したら莫大な負債を抱えるというイメージがありますが、借金しなければ負債は発生しません。ならば借金しないでおこうと考えて、いくらなら失っても『勉強代』と納得できるかと考えて資本金200万円という数字を出しました。

また、夫を巻き込む必要があると思い、『この先3年間、あなたの給料だけで家庭を回すことは可能ですか。また会社を辞めずにいられますか」と聞いて承諾をもらいました。

さらに失敗したら再就職しなければなりませんが、転職エージェントに『これまでのキャリアでどんな会社に応募できるか』と聞きに行って、今の給料の1.5倍になる職があるというので、これは将来バラ色じゃないか(笑)と思って起業を決断しました」

起業してよかったことは?

高嶋「会社にしがみつくとか、会社で生き残るために~~しなければならないという発想がなくなりました。何かあった時、別の会社やコミュニティが自分にはある。結果として気持が自由になったと思います。また、本業でのモノの見方と、副業でのモノの見方、二つの視線を持てるようになったのもよかったです。また小さな会社でもトップはトップなので、企業のトップの方にお目にかかりやすくなったのは役得かなと思います」

起業して大変だったことは?

和田「サービスインの半年後、予想より売上が上がらず、お金がなくなってしまった事です。倒産する寸前でした。先輩起業家や会計士の方に片っ端から相談にのっていただき、『費用を売上の範囲内に抑えること』という今から考えると当たり前のアドバイスをいただきました。資金が豊富にない中でそのうち売上が増えるだろうと楽観的に考え、あれもやりたいこれもやりたいと費用を増やしてしまっていました。そこで、アドバイス通り、当時借りていたシェアオフィスのプランを安いものに変更したり、カフェで行っていたタスカジさんの面接を自宅に切り替えたり、手伝ってくれている方にお願いして業務量を減らしていただいたりと色々と調整を図りました。理屈では『費用を売上の範囲内に抑えること』と分かっていても、ついつい気持ちが焦って費用を使ってしまうものであることに気が付き、それからは出費には非常に気をつけるようになりました。今となってはいい学びだった、リーダーとして一歩前進できた経験と思っています」

起業への想いを形にするLEGO® ワークショップ

後半のワークショップが始まりました。ファシリテーターの井澤さんは10数年にわたって教育ワークショップをファシリテートしてきた実績を持ち、年間にして150回、4,000名もの参加者が彼のワークショップに参加してきました。この日のワークショップの狙いは、「起業とは自分にとって何なのか」「何に躊躇しているのか」を明らかにすることにあります。井澤さんは、ただ共感して終わるのではなく、自分と他人との違いを感じ、その違いを発見することが重要と語りました。

「今日はいろいろ課題が出てきますが、ポイントは『脳』より『手』を信じることです。腕組みをして考えこまないで、積極的にレゴ®ブロックに触れながら、どんどん組み立てていってください。Don’t think. Feel! それが重要です」

井澤さんはそうして、自分を紹介するためにブロックを3つを選ぶという最初の課題を出しました。1つ目は今の気分を一番表しているブロック、2つ目は自分のおタク要素(こだわりや価値観)を一番表しているブロック、3つ目は今日のワークショップへの期待する気持ちを表しているブロックです。選び終わったら、なぜそれらのブロックを選んだかチームメンバーに紹介していきました。

2番目は自立しているタワーを作るという課題でした。3分間でできるだけ高いタワーを作るのですが、建て終わったら、今度はそれを自分自身に見立てて、どこが自分らしいかをチームメンバーに伝えます。後付けでブロックの色や形に意味を与えるという作業です。その後、チームメンバーが質問します。話すときも、質問するときも、メンバーの顔を見ずにブロックを見ながら話をしてくださいと井澤さんはアドバイスしました。

「起業で実現したいこと」を可視化して行動へとつなげる

ここからがワークショップのメインイベントです。チャレンジ1のテーマは「あなたが起業したいことで実現したいことは何か」。 レゴ®ブロックを使って、制限時間5分の中で自由に表現します。なぜ、レゴ®ブロックを活用して対話を行うのか。ポストイットなどの手法を使っても潜在意識を表出させることは可能ですが、例えばポストイットで「実現したいこと」を「壁を壊す」と書くだけでは、「確かに組織や社会には壁があるよね」という共感にとどまってしまう場合が多い、と井澤さんは言います。ブロックを使い「壁そのもの」を具体的な姿で表現することで、メンバー同士がお互いの言葉や意見に対して問うハードルが下がるのです。

続いてはチャレンジ2「いま、あなたが起業に向けて躊躇しているコトは何か?」というテーマです。これを新しい作品として表現します。やはり制作時間は5分間。このころになると、どなたもブロックを組み立てる作業に慣れた様子で作品作りに没頭。その後の作品言語化作業も非常に活発に行われていました。

最後はチャレンジ3「いま、躊躇しているものを乗り越えるために必要なコトはなんだと思うか?」というテーマです。これを表現するブロックを選び、先に作った作品のそばに置いて考えるとともに、チームメンバーと共有するという作業を行いました。

ワークショップ終了後、井澤さんは今後の行動が重要と語りました。

「今日の皆さんにとっての収穫は、起業というテーマに対して問いを立てたということです。ぜひ次は行動を起こしてください。ワークショップは掛け算です。そこで得た知識が30、気づきが40でも、行動は0なら結果は0です。しかし、行動が1以上なら結果は1200以上と大きな意味を持ちます。『大きな発見がありました。目からウロコでした』で終わらせるのではなく、小さなことでも行動を起こされることをお勧めします」

と参加者の皆さんにエールを送っていました。

・パネラー

和田 幸子氏 / 株式会社タスカジ 代表取締役社長

1999年富士通株式会社に入社し、システムエンジニアとしてERP製品の開発に従事。2005年、企業派遣制度にてMBA取得後、ERP製品のウェブプロモーション、中小企業向けクラウドサービス事業立ち上げのプロジェクトリーダーを務める。2008年、第一子を出産後、フルタイム勤務で復職。2013年10月、自身の課題でもあったとも働き家庭の「新しいライフスタイル」実現に必要な社会インフラを「ITを活用して作る」ため、富士通を退職。同年11月、ブランニュウスタイル株式会社(旧社名、現・株式会社タスカジ)を設立。2014年7月、家事代行サービスマッチングプラットフォーム「タスカジ」をオープン。日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2018「働き方改革サポート」受賞。

株式会社タスカジ https://taskaji.jp/

高嶋 大介氏 / 一般社団法人INTO THE FABRIC 代表理事

富士通株式会社にて、ユーザー・エクスペリエンスデザイン、デザイン・リサーチ等の経験を活かし、クライアントやチームの戦略・実行プロセスを支援。
共創の場、HAB-YUの設立、企画、運営を行う。
共創の生まれる場から生まれるコミュニティやイベント・学びの企画・運営をするなかでゆるいつながりがこれからの社会を変えると信じ、それを伝えるべく一般社団法人INTO THE FABRICを設立。

一般社団法人INTO THE FABRIC https://www.intothefabric.org/

・ワークショップ デザイナー・ファシリテーター

井澤 友郭氏

こども国連環境会議推進協会 事務局長
社団法人 公共ネットワーク機構 理事
ワークショップデザイナー
LEGO®SERIOUSPLAY® 公認ファシリテーター

2003年から「正解のない課題」に「探究的に挑戦し続ける」人材の育成を目的とした、オルタナティブな教育プログラムを開発。企業や研究機関と連携したプログラムを年回150回ほど開催し、延べ1万5千人以上の学生や社会人にファシリテーターとして指導してきた。そのプログラムは、デザイン思考やナラティブ・アプローチ、経験学習など、さまざまなメソッドを取り入れており、主体的な人材を育てるためのプレイフルな学びの場として定評がある。

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