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【イベントレポート】IoTで日常の難題を解決! 「Tokyo IoT Monozukuri College 2017」受講者がデモ機を披露

起業を支援する「Startup Hub Tokyo」では、定期的に起業に役立つセミナーやイベントを開催しています。

2017年08月05日、「Tokyo IoT Monozukuri College 2017」のDemodayが行われました。これは、約3ヶ月間にわたって展開されたモノづくり起業支援プログラムのいわば総仕上げの日です。モノづくり起業をめざす6つのチームがそれぞれに日常の難題を解決するハードウェアを試作。プレゼンテーションとともにその有用性と可能性をアピールしました。いずれのチームも目のつけどころが確かでデモ機も動作。日本に息づく“モノづくりDNA”を感じさせました。

約3ヶ月間続いたモノづくり起業支援プログラムの総仕上げ

「Tokyo IoT Monozukuri College 2017」は、Startup Hub Tokyoが主催し、CAMI&Co.およびモノづくり起業推進協議会が企画協力して実施したモノづくり起業支援プログラムです。対象はハードウェアを用いたビジネスアイデアを持っている方やハードウェア・ソフトウェアエンジニア、デザイナー、ビジネスプランナーなど。今回は特にIoTをテーマとし、3か月間でモノづくりの基本からプロトタイプの作成、チームづくりや資金調達といった「モノづくり」と「起業」に関する実践的な知識を身につけることを意図して行われました。

スタートは、5月27日のDAY1に行われたインプットセミナーでした。その後、初級IoT実践ワークショップ、3D CAD実践ワークショップなどを経て、DAY6からは「SHIP 品川産業支援交流施設」で3Dプリンタなどを使ってモノづくりを実践。ビジネスモデル、プレゼンテーションストーリーなども練り上げながら実質3日間でデモ機を作り上げました。

そして迎えたのがこの日のDemodayで、全6チームが最優秀賞をめざしてプレゼンテーションおよび実機デモを行います。

「米国のスタートアップはWeb系が多数派。日本にもチャンスある」

オープニングの基調講演に登場したのは、モノづくり起業推進協議会 副会長 関信浩氏でした。

ニューヨーク在住の同氏によると、米国人は起業ファーストのマインドがあり、チャンスがあれば就職するよりも起業を選ぶといいます。また、クラウドファンディングやコワーキングスペースなどスタートアップ支援環境も充実しています。しかし、多くのスタートアップはWeb系で、ハードウェアスタートアップは少数派。多額の資金が必要でサービスインまで時間がかかるためで、“Hardware is hard”という言葉があります。

こうした米国の状況は、日本にとって追い風だと関氏は語ります。

「Web系に比べると競争は少なく、日本人はモノづくりが大好きで、アジアでの製品量産経験を持っている人材が豊富です。ただ、資金調達を考えてシリコンバレーへ直行するのは考えもの。情報収集を入念に行い、事業に合った活動拠点の選択が重要です」(関氏)

モノづくり起業推進協議会が米国開催の「Hardware Cup」向け国内予選を行うなど、日本でも日本のモノづくり起業者の支援環境は整いつつあります。関氏は“このようなチャンスをどんどん活用して起業の夢を実現させてほしい”とエールを送りました。

モノづくり起業推進協議会副会長 関信浩氏

プレゼンテーションとデモでソリューションを紹介

さて、待望のプレゼンテーション、トップバッターはチーム「看板娘」です。飲食店を訪れてみたら満席で入れなかった、というのは日常よくある経験ですが、このような無駄足を防ごうと、飲食店の混雑状況を事前に把握できるソリューションに取り組みました。

手作業でWebサイトに状況を更新するのは店の負担が大きく、POSシステムなどと連動したシステム開発は高コストすぎると判断したチーム「看板娘」は、店の入口にWebカメラを設置し、センサーを使って人の出入りをカウント、それをリアルタイムに専用スマホアプリや主要な飲食店情報サイトへ提供する方法を考え出しました。デモタイムにはこのイベントが行われたホールの入口に置いたデモ機で来場者をカウント。チーム「看板娘」は「飲食店、来店客の双方にメリットあるシステム」と訴求しました。

チーム「看板娘」

チーム「看板娘」のデモ機「kNnow」 Webカメラで人の出入りをカウント

2番目のプレゼンテーターはチーム「ヒアラボ 」です。彼らが着目したのは会議時間の削減でした。会議が長引きがちなのは、無駄なコメントが多く、建設的な意見が出にくいために膠着状態に入ってしまうと考えた彼らは、発言しやすい環境を生み出すハードウェアを考案しました。音声認識技術で発言内容を文字と画像で視覚化するとともに、その発言がネガティブな内容であればアラートを出します。デモでは、メンバーがデモ機を真ん中に置いてブレーンストーミングを実演。「それは売れなさそうだ」などを発現すると、ユニークな効果音が飛んで会場を沸かせました。今日、音声認識はスマートフォンでも可能ですが、あえてハードウェアとして作りこむことで、ユーザーが簡単に操作を習得して使いこなせることをめざしたそうです。大企業への直接販売、会議コンサルタントなどを通した間接販売を考えているとのことでした。

チーム「ヒアラボ」

チーム「ヒアラボ」のデモ機「Brester」建設的なブレーンストーミングを支援

3番目に登場したのは、チーム「ダント」です。まず紹介したのは「あなたのおうちの歯医者さん 歯の遠隔診療サービス ダント」というキャッチフレーズでした。彼らの調査によると、多忙にも関わらず4割の人々が定期的に通っている医療機関が歯科医院で、通う頻度を減らしたいという要望がありました。それなら歯医者さんに遠隔診療してもらえばいい、ということで、自宅で歯の画像を取ってサーバにアップできるハードウェアを考案しました。LEDライトと内視鏡がついた歯鏡型デバイスで自分で口腔内の写真を撮って手元のモニターに送り、それをサーバにアップします。その後マイページに診断結果が届き、もし受診が必要ならそこから歯科医院の予約ができ、専門的なアドバイスが必要ならそこでチャットという仕組みです。診断は今のところ歯科医の目視が現実的ですが、将来的には蓄積画像をAIで分析、診断や予測までめざすというのがチーム「ダント」の構想でした。

チーム「ダント」

チーム「ダント」のデモ機「Dent」自宅で口腔内写真の撮影を実現

ビジネスモデルにも言及してソリューションの可能性をアピール

後半戦、最初のプレゼンテーションチームは「ネコ」です。彼らは全員猫好きで、猫の飼い主であることから猫の健康管理ソリューションにチャレンジしました。猫は警戒心が強く、回りに弱みを見せない動物で、病気であることに気づいたときにはかなり重症だそうです。それでは数十万円単位の医療費がかかるケースもあります。そこで、重量センサー、温度センサーといったセンサー類やカメラを搭載したハードウェアで、ネコの体重、体温、飲水量を測定、画像とともにスマートフォンやPC画面で把握できるようにしました。これを毎日チェックすることで、猫の体調変化にすばやく気づくことができ、医療費も抑制できるというわけです。猫の飼い主の4割が多頭飼いであることから、複数の猫のデータを管理できる設計にしたそうです。10,000円以内の価格実現をめざし、獣医師やペットシッターに対して情報を提供することによる手数料売り上げも見込みます。

チーム「ネコ」

チーム「ネコ」のデモ機「Miru-Nya」多頭飼いに対応した猫ヘルスログマシン

続いて登場したチーム「Team F’ 」が提案するのは、ウェアラブルな体重計です。ダイエットは現代人にとって永遠のテーマですが、忙しい、面倒、と、さまざまな理由でなかなか運動習慣が身につきません。ならば常に体重を意識できる環境を手に入れて現実に直面しようと彼らは考えました。重量センサーを組み込んだサンダルを作り、そこで測定したデータをスマートフォンでチェックできるようにしたのです。体重測定は静止体勢を取ったところで行えます。今回はサンダルで製作しましたが、重量センサーを中敷きに組み込む形にすれば、さまざまな靴に対応可能です。デモでは、メンバー自らがサンダルを履いて、測定結果が送られてきたスマートフォン画面を見せました。想定価格は5,000~7,000円。ウェアラブル端末が着実に市場を拡大する中で、まだ靴をテーマにした製品は数少ないとし、健康管理意識の高い北米市場も狙っていくと意欲的でした。

チーム「Team F’」

チーム「Team F’」のデモ機「SLOPPY」 靴で実現したウェアラブル体重計

プレゼンテーションのトリを務めたのは、チーム「アベンジャーズ」でした。彼らが解決したいと考えたのはイベント会場での椅子運びです。大きなイベントとなれば万単位の椅子が必要で、現在はすべて人が作業を行っています。ライブ終了後の遅い時間に黙々と椅子を片づけるというきついアルバイトがこの世にはあるのです。この労働集約的な作業をロボットに代わってもらおうとクルマ型小型椅子運びロボットを開発しました。四脚椅子の一脚にロボットが取りつき、そのままズズズッと引きずっていきます。最終的には完全自走をめざしますが、まずはラジオコントロールからとスマートフォンでのロボット操作に挑みました。残念ながらデモではちょっとスムーズには動きませんでしたが、これが実現できれば人をタフな単純労働を解放できるとし、イベント会社を見込み顧客にビジネスプランを練っていました。

チーム「アベンジャーズ」

チーム「アベンジャーズ」のデモ機「イボット」椅子の脚をはさんで運ぶ

最優秀賞チームを始め、3チームが「IoT&H/W BIZ DAY 4」へ

続いて行われたタッチ&トライ ネットワーキングタイムでは、イベント来場者と参加チームがデモ機を間に交流します。中には早くも商談に近い会話が進んでいるチームも。イベント来場者はまた、この時間を使って気に入ったチーム二つを選んで投票しました。

そして、いよいよ審査発表。その前に4名の審査員が一言講評を披露しましたが、その中で、自らもモノづくりベンチャーで、ウインクで撮影できるウェアラブルカメラBLINCAMを開発している株式会社blincam 高瀬昇太氏は「モノづくりのアイデアはいっぱい転がっていますが、重要なのはちゃんと製品化して世に出していくこと。関さんの言った“Hardware is hard”は事実で、必要な資金もゼロが一つ違ってきたりしますが、カギとなるのは創業者の“意地でもやってやる”という気概。がんばってください」とエールを送っていました。

株式会社blincam 高瀬昇太氏

審査の結果、最優秀賞は歯の遠隔診療サービスを提案したチーム「ダント」が獲得。 チームリーダーは「もともと歯のスタートアップを考えていたところへ、このIoTコースに参加できてラッキーでした。すべてのプロセスを楽しめました」と受賞コメントを寄せていました。彼らはまた、8月28日(月)に開催されるアスキー主催「IoT&H/W BIZ DAY 4」で、Startup Hub Tokyoブースにデモ機を展示することができます。

最優秀賞を獲得したチーム「ダント」が喜びの受賞コメント

さらに、急きょ、 モノづくり起業推進協議会会長の牧野氏より、チーム「ネコ」、チーム「アベンジャーズ」に対して、自身が代表を務めるMakers Boot Camp賞が贈られました。さらに、「IoT&H/W BIZ DAY 4」のMakers Boot Campsのブース に、デモ機を展示できる機会も。「Tokyo IoT Monozukuri College 2017」は、予想以上の成果に湧きながら一日の幕を閉じました。

Startup Hub Tokyoでは、起業を検討している方向けに知識やノウハウを提供するイベントを定期的に開催しています。起業を検討している方は、ぜひ足を運んでみてください。

・講師

関 信浩 氏 FabFoundry, Inc. 創業者
1969年東京生まれ。1994年、東京大学工学部卒(BS取得。専攻は金属材料学)。2002年、カーネギーメロン大学経営大学院卒(MBA取得。専攻はEntrepreneurship)。
米FabFoundry, Inc. 創業者。株式会社Darma Tech Labs 取締役、株式会社GENOVA顧問、シックス・アパート株式会社 顧問などを務める。1994年から2003年まで、日経BP社で編集(日経コンピュータ編集部)や事業開発(ITproプロジェクト、MIT Technology Review日本語版プロジェクト)に従事。 2001年にロンドンビジネススクールの起業サマースクールに参加し、位置情報対応携帯電話を使ったリアルワールド・ロールプレイングゲーム「SyncWorld」をビジネスプラン化。その後カーネギーメロン大学ビジネススクール(Tepper)在学中に、ビジネススクール代表チームを率いて複数のビジネスプランコンテストに参画、特別賞などを受賞。2003年にSyncWorldの事業化を資金不足で断念。ネオテニー社に参画し、シリコンバレーのスタートアップSix Apartの初期メンバーとして合流し、2003年12月、シックス・アパート株式会社を設立し代表取締役に就任(2015年5月より顧問)。2010年12月にConnectFreeの創業に共同創業者として参画(現任)。2013年9月より株式会社GENOVAの取締役に就任(2016年7月より顧問)。2015年5月よりInfocom America, Inc.のExecutive Vice Presidentに就任(2017年5月に退任)。2017年3月より株式会社Darma Tech Labsの取締役に就任(現任)。2015年2月にFabFoundry, Inc.を設立し、創業者に就任(現任)。

・審査員(50音順)

石井 芳明 氏 経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 新規事業調整官
中小企業政策、ベンチャー企業政策、産業技術政策、地域振興政策等に従事。2012年から経済産業政策局新規産業室新規事業調整官として、ベンチャー政策、オープンイノべーションによる新規事業創出支援を進める。早稲田大学大学院商学研究科卒 博士(商学)

入月 康晴 氏 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 情報技術グループ長兼 IoT開発セクター長
IoT開発セクターでは、中小企業へのIoT化推進のためのシステム開発、IoT関連機器、ソフトウェア等での製品開発支援を行っている。
2002年名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻修了。博士(工学)。

鈴木 亮久(ガチ鈴木)氏 株式会社KADOKAWA ASCII編集部 ASCII STARTUP
株式会社KADOKAWA所属のASCII編集部編集記者兼ビジネスプロデュース。1981年1月28日生まれ。2003年アスキーに入社、週刊アスキー編集部にて、ニュース記者を担当。カバー範囲はPC、自作PC、スマートフォン、ウェブサービスと幅広く、メインはウェブ、アプリの新サービスの記事作成を長く務める。LINEやニコニコ動画の黎明期から取材を担当し、サービスの成長を一緒に体感。それをきっかけにベンチャー、スタートアップ担当として、応援部隊“ASCII STARTUP”を立ち上げる。
・ASCII STARTUP http://ascii.jp/startup/

高瀬 昇太 氏 株式会社blincam CEO
System Engineer, Project Managerとして国内Sier、ジョンソンエンドジョンソンにてし金融システム、監査システムの開発やM&Aに伴うデータベース・BIシステムの統合などのグローバルプロジェクトを担当。2013年よりスタートアップウィークエンドに関わり、自身もファシリテーターとして組織の運営に関わるとともにリーンスタートアップのモデルを実践し、2015年7月に株式会社blicamを創業、子供の自然な表情を録り逃したくないという想いから、ウインクで撮れる世界最速のウエアラブルカメラを開発。2016年マクアケにて2640%を達成、2017年流行する商品に選ばれる(日経トレンディ)。blincam, inc.(米)を設立し、米国・世界市場への展開を進めている。Bond大学(豪)MBA。

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