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【イベントレポート】「仲間とビジネスをしている瞬間が最高に楽しい」−エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO 天沼 聰

起業を支援する「Startup Hub Tokyo」では、定期的に起業に役立つセミナーやイベントを開催しています。

6月15日にはトークイベント「洋服定額借り放題サービスで急成長!『エアークローゼット』の―女子のココロを掴むビジネス成功の秘訣とは―」が行われました。

ゲストにお迎えしたのは、月額制オンラインファッションレンタルサービス「airCloset」を運営する株式会社エアークローゼットCEOの天沼聰さんです。「起業するならインターネット事業」と決めていたという天沼さんに、airClosetを立ち上げた理由やサービスに込めた想い、起業をする上で意識したこと、今後の展望などお話を伺いました。

感動する洋服との出会い体験を作る『airCloset』とは

2015年にサービスを開始した『airCloset』は、日本初の普段着に特化したファッションレンタルプラットフォーム。ユーザーがオンラインで服の好みやサイズを入力すると、スタイリストが3着の洋服を選び専用ボックスに入れて送付。受け取ったユーザーは洋服を着てみた後、元のボックスに入れて返送。すると、また次の洋服が3着届くというもの。料金は月額制で気に入った洋服は購入することも可能です。

天沼さんにとってairClosetは単に洋服を届けるサービスではありません。仕事や子育てでファッションを楽しむ余裕のない女性の日常に、”これまでにない感動するお洋服と出会う体験”を提供することを目指していると言います。

「airClosetが提供したい価値はモノとの最適な出会いです。スタイリストという第三者が介在することによって自分の感性の外にあるものに出会える。思いがけない出会いやひらめき、セレンディピティーをairClosetを通してお届けしたいと考えています。実際にお客様さまからは、『自分で選ばない服と出会えた』『洋服が届いたらもっとお出かけしたくなった』といった声をいただいており、弊社が目指す”感動体験”を楽しんでいただけていると実感できています」

airClosetが最適な出会いを届ける対象は決してユーザーだけではありません。天沼氏はアパレル業界に対しても貢献をしていきたいと話します。

「airClosetはブランドとお客様の架け橋でありたい。そのためお客様に貸し出すお洋服も卸業者から大量に購入するのではなく、一つ一つのブランドと直接契約をした上で揃えています。サービスの開始当初から、貸し出すお洋服のブランド認知度向上やプロモーションのサポートを実施。今後はairCloset上でお客様がお洋服に対して寄せてくださった感想をビッグデータとして蓄積し、アパレル業界の方が活用できるような仕組みを整えていければと考えています。

またアパレル業界自体にも何かできることがないかと考え、人材育成の面から業界の支援をしています。例えば、アパレル業界に多数人材を輩出している専門学校からインターン生を受け入れたり、僕自身が講義を行ったりといった取り組みを行っています」

良い物が継続的に生み出される仕組みを作るシェアリングエコノミー

ユーザーだけではなくアパレル業界に対してもポジティブな影響を与えているairCloset。ユーザーや取引するブランドにとどまらず、アパレル業界全体に信頼されるサービスを目指した理由について、天沼さんは自身の考えるインターネットの変化から話してくれました。

「数年前までのインターネットは、匿名が当たり前で、本名を公開する心理的ハードルが高かった。そこにスマホが登場してインターネットがより人々の生活に密着したことで、本名を出して人と繋がることに抵抗を感じる人が少なくなってきています。

そのなかで私が期待しているのが『シェアリングエコノミー』の考え方です。インターネットを介して人と人の信頼をベースにビジネスが成り立っていく。信頼をベースにしたサービスは、空間や時間の制限に縛られないオンラインの方が、より拡張していく可能性があると感じています」

airClosetもファッションレンタルサービスであると同時にシェアリングエコノミーのサービスです。洋服のような”モノのシェアリング”は、「購買活動の代替」あるいは「ミニマリスト」といった消費の減少に近い文脈で取り上げられることもありますが、天沼さんが思い描くシェアリングエコノミーは作り手にもお金や情報が還元されるシステムです。

「airClosetの考える”モノのシェアリングエコノミー”は、ただ単にモノを共有して消費を抑えることではありません。継続的に良いモノが生み出されるために、作り手へお金や情報が還元されること、そしてモノやサービスが最適な人に出会い大切にされる社会づくりを目指しています」

信頼をベースにしたサービス作りのために、徹底的にユーザーに寄り添う

消費者にも作り手にも価値が還元される仕組みを作り上げていくうえで、天沼さんが実践しているのは、業界や社会の中でサービスが果たす役割を明確にすることでした。

「お客様の声を聞くだけなく、業界や社会の大局を捉え、サービスが果たす役割をちゃんとストーリーとして語れることを起業時は強く意識していました。当時はアパレル業界との繋がりが無かったのですが、周りに紹介してもらいながら最終的には200〜300人にヒアリングを行いました。

サービスの顧客や洋服を提供してくださるブランド、サービスを取り上げてくださるメディアに至るまで。あらゆるステークホルダーの立場に立って自分たちのサービスの意味を考え、自分たちの作り出すサービスの価値をシンプルにわかりやすく語れるよう的確に言葉に落とす作業を徹底しました」

自分たちのサービスが提供できる価値を問い続けることに加えて、天沼さんが創業時からこだわっているのが冒頭でも上がった顧客に”感動体験”を届けることです。

「お客様を”満足”させるためには、求めていることを聞いて着実にそのニーズを満たせばいい。ですが、予想を超える”感動”を届けるためには、お客様のことを第三者目線で理解し、何をしてあげればいいかを考え抜き、明確な意思を持って事業を進めていく必要がある」

感動を届けるために、airClosetが徹底しているのが、数字をベースに話をすること。

「airClosetでは数字にもとづく仮説思考を徹底しています。何かチームのメンバーから提案してもらう際も、『それをすると誰が喜ぶのか、いつまでにどの数字がどうなるのか』といった点が明確でなければいけません。仮説思考を回してサービスの質を高め、お客様の感動を作り出せる組織づくりに、力を入れて取り組んでいます。

自分達が主体となりお客様に感動を届けられるのは、事業者側であるからこそ可能なこと。感動を届けられていると実感できるときほど、事業の楽しさを感じますね」

仲間とともに、全身全霊で取り組む起業の楽しさ

事業の楽しさを語りながら自然と笑みがこぼれる天沼さん。自身が生み出したサービスの発展に全力を注ぐモチベーションの源泉は、”ビジネスのプロでありたい”という想いだと語ります。

「全力で事業と向き合いチームを率いるビジネスのプロとしての生き方に、私は強い憧れを持っています。僕が尊敬している経営者のスティーブ・ジョブズは、ハーバード大学のスピーチの中で、『今日あなたの人生が終わるとしても、今やっている仕事を続けるか』と述べていました。同じく尊敬する、稲盛和夫さんも、仕事において一瞬一瞬を完全燃焼できることの重要性を説いています。私はお二人のようにチームのリーダーとして全身全霊で事業に取り組む生き方にあこがれています。自分もそういった生き方を実践したいからこそ、起業という選択肢を選びました」

天沼さんは、自身がビジネスに取り組む楽しさについて語りつつ、仲間の存在についても言及します。

「私は仲間と一緒にビジネスをしている瞬間が最高に楽しいんです。仲間と作ったサービスでお客様を喜ばせることができて、お客様が喜ぶ様子を見て仲間も嬉しそうにしているのを見ていると、心からやりがいを感じられます」

自身の理想の生き方を追求し、事業に全力で向き合う日々を送る天沼さん。会場に集まった参加者に対しては、「どんどん起業してみてほしい」とエールを送ります。

「日本ではまだまだ起業をする人が多くありません。もっともっとベンチャー起業が生まれる土壌が育っていくことに期待したいです。特にインターネットで起業をするハードルは、以前に比べると圧倒的に下がってきている。

アプリを作れる人であれば数日でビジネスを作ることができる時代です。投資市場も年々大きくなってきている。起業に対して追い風となる要素は揃っています。なにより、仲間とチームになってビジネスを創造していく日々は本当に充実しています。起業を経験した立場として、みなさんにもぜひ挑戦してみて欲しいと思います」

ユーザーだけではなく業界や社会全体に対しても、自身のサービスが与える価値を妥協せずに考え続けていた天沼さん。ポジティブな影響が循環するサービスを追求し続ける姿勢は、これからインターネットを使った事業を生み出していく上で、不可欠な要素といえるのではないでしょうか。

Startup Hub Tokyoでは、起業を検討している方向けに知識やノウハウを提供するイベントを定期的に開催しています。起業を検討している方は、ぜひ足を運んでみてください。

・ゲスト

天沼 聰 あまぬま さとし / 代表取締役社長 兼 CEO

ロンドン大学卒業後、帰国。アビームコンサルティング株式会社にてIT・戦略コンサルタントを約10年にわたり経験し、その後楽天株式会社に移籍。UI/UXに特化したWebのグローバルマネージャーを務める。

2014年7月、“発想とITで人々の日常に新しいワクワクを創造する“を理念に株式会社エアークローゼットを創業。2015年2月、新感覚オンラインファッションレンタルサービス”airCloset”を立ち上げる。

【略歴】
2002年 ロンドン大学卒業
2003年より、アビームコンサルティング株式会社にて、IT・戦略コンサルタントを約10年経験
2011年より、楽天株式会社にて、UI/UXに特化したWebグローバルマネージャーを約3年経験
2014年7月 airCloset を立ち上げる

執筆:向晴香(inquire)

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