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「プレゼン漬け」の2カ月で手に入れた「スキル」と「度胸」と「仲間の絆」 -女性起業家のためのプレゼンブートキャンプ ~最終発表~

Startup Hub Tokyoで約2カ月にわたって展開された実践型講座「女性起業家のためのプレゼンブートキャンプ」が、2018年1月27日に最終日を迎えました。「人の心をつかみ、思いが伝わるプレゼンができるようになりたい」という決意を胸に、文字どおり「プレゼン漬け」の日々を過ごしてきた受講者。これまでの生活とはまったく違った密度で「プレゼン」について考え、向き合ってきた彼女たちが、その成果を披露しました。

年末年始の「実践演習」を通じてプレゼンをブラッシュアップ

講座の第1回(キックオフ)は、2017年12月3日に行われました。受講者に与えられた共通のテーマは「家電製品のアンバサダーとなり、あなたのプレゼンを聞いた人が電器屋さんに走りたくなるようなプレゼンテーションをしてください」というもの。発表時間は「5分ぴったり」に収めることが目標となります。

キックオフで、講師の奥部諒氏は受講生に対し「準備や練習に十分な時間をかけて実践演習に臨むこと」を強く求めました。それぞれに仕事や生活を抱える中で、プレゼン作りのためのまとまった時間を捻出するのは、決して容易なことではなかったでしょう。

(関連記事:ひたすら「プレゼン」のことを考え続ける2カ月間で彼女たちに起こる変化は?-女性起業家のためのプレゼンブートキャンプ~キックオフ~)

受講生は、12月と1月の週末に計4日間かけて行われた「実践演習」で、各自2回ずつ自分のプレゼンを発表。構成や発表の仕方などについて、講師や他の受講生からフィードバックをもらいながら、内容を洗練させてきました。同時に、他の人のプレゼンを聴衆として聞き、そこから受けた印象を理由と合わせて掘り下げて考えることで、学びを積んできました。

1月27日には10名の受講生が、ブラッシュアップしてきたプレゼンの「最終発表」に臨みました。実践演習では、他の人の発表も批評的な視点で聞き、ディスカッションすることが求められていましたが、最終発表では、奥部氏から、それぞれの受講者に対して、今後のステップアップのためのポイントが講評として述べられました。

プレゼンの完成度をさらに高めるためのポイントは?

ここでは、奥部氏の講評の中から、プレゼンスキルを高めたいと考えている、すべての人に役立ちそうなものをいくつかピックアップして紹介します。

・「目の動き」「身体の動き」はプレゼンの印象を左右する

多くの受講生が指摘されていたのが、プレゼン中の「目線」と「身体」の動きについてでした。決められた時間内でうまくプレゼンをしようとすると、普通の人はどうしても緊張してしまいます。その緊張は、無意識のうちに目や身体の動き(上半身の揺れや手の振り)として現れます。そして、その動きは聴衆にとって「落ち着きがない」「自信がない」といった、話者に対するマイナスの印象を生みだしがちです。

話者の動きは、聴衆が受ける印象に強く影響を与えます。手の動きや上半身の動き、壇上での移動は、プレゼンの中で意味があるものなら良いのですが、そうでなければ意識してやめたほうが、落ち着いた印象を与えます。同様に、目線も大切です。聴衆ひとりひとりをゆっくり見渡す動きはプレゼンに引き込むために有効ですが、キョロキョロとした動きは自信のなさを感じさせてしまいます。

・「あー」「えー」は自分でビデオを見ると直しやすい

プレゼンに限らず、人前で話す際に「あー」「えー」といったフィラー(埋め言葉)が多くなってしまう人がいます。プレゼンを聴く側が頻発するフィラーに気付いてしまうと、内容がまったく頭に入ってこないほど気になるものですが、しゃべっている当人は意識していないことがほとんどです。プレゼンにとってはデメリットしかありません。

フィラーは、自分では気付かないうちに発してしまうもの。フィラーを直すための一番早い方法は、自分のプレゼンをビデオやボイスレコーダーで記録し、聞き直してみることです。自分がフィラーを発していることを意識さえできれば、とても直しやすくなります。

・「デモ」は聴衆の「目線」と「意識」の切替を促す

今回、受講生が取り組んだプレゼンのテーマは「家電製品」でした。そのため、プレゼンの中で、実際に製品が動くようすを現物や動画を使って聴衆に見せる工夫を行った人もいました。奥部氏は、こうした「デモ」を行う際の注意点として、聴衆の「目線」と「意識」をうまくコントロールするようアドバイスしました。

「現物を使ったデモをするときは、まず『今からデモを見せる』ことを聴衆に伝え、現物に対して目線と意識を集中させるようにしましょう。デモは、スライドを見ながら話を聞くというプレゼンの流れとは異質のパートになります。そうしたパートに切り替わることを明示して、聴衆が戸惑わないように気を遣いましょう。さらに、デモはスライドが表示されているスクリーンの前で行うようにすることで、聴衆の目線の移動量を減らし、自然にデモの内容に意識を誘導することができるようになります」

・「レーザーポインター」は使わない

スライドの特定部分を赤い光で照らし、聴衆の目線を誘導する「レーザーポインター」。何となく格好良い雰囲気もあり、プレゼンで利用しているという人も多いのではないでしょうか。しかし奥部氏は「基本的にレーザーポインターは使わない方が良い」とアドバイスしました。

スライドにどうしても細かいグラフや表を入れなければならず、その一部を指し示す必要があるのなら別ですが、それ以外の場合は、レーザーポインターは使わないことを勧めます。レーザーポインターの点は小さく、スライドを指し示す場合も、光点が細かくぶれるなど「ノイジー」になりがちです。特に短時間のプレゼンでは、できるだけ邪魔な情報を排除して、伝えたい内容だけに聴衆の意識を集中させることに注力すべきです。

・聴衆への質問は「もろ刃の剣」

小さな会場でプレゼンをするとき、導入として聴衆への「質問」から始めるというスタイルが効果的なケースがあります。これから始まるプレゼンの内容を「自分に関わることだ」と意識させる的を射た質問は、聴衆のプレゼンへの関与度を高めるための良い方法です。しかし奥部氏は、「効果的であるからこそ、そのリスクについても理解しておくべき」と指摘します。

聴衆の中には、さまざまなバックグラウンドを持った人がいる可能性があります。その人たちのすべてに効果的に問いかける「質問」というのは、必ずしも簡単ではありません。最も分かりやすい例で言えば、特定の「政治」や「宗教」的な立場についての質問というのは、時に問われた側にストレスを与えます。こうしたテーマに関わるプレゼンをする機会は多くないかもしれませんが、特に聴衆に「質問」をする場合には、その内容がどのような意味を持つかについて、事前によく考えておく必要があります。

また、個人に対して質問する場合には「どのような答えが返ってくるか」も想定しておく必要があるでしょう。特に、決められた短い時間内でのプレゼン(ピッチ)では「想定外の回答や反応」が、プレゼン全体の構成を壊してしまう可能性もあります。「質問」は、思いどおりに機能すれば効果的だからこそ、思いどおりにいかなかった場合の危険性についても考えておくべきなのです。

・「デザイン力」を高めるための方法はある?

「プレゼンテーションで使うスライドのデザインを洗練するためにはどうしたらいいか?」というのは、今回のブートキャンプ参加者に共通する悩みのひとつだったようです。奥部氏は、ブートキャンプに先がけて実施した「なぜあなたのプレゼンは伝わらないのか」と題したセミナーの中で「フォントの選び方や配色」「要素のレイアウト」についてのコツを紹介していましたが、これらはあくまでも「見やすさ」や「理解しやすさ」といった、スライドの機能を高めるために標準化されたハウツーでした。デザインとしての「きれいさ」や「かっこよさ」は、また別の課題になります。

「デザイナー」という専門職があることからも分かるように、そうしたデザインセンスの洗練は一朝一夕にできるものではありません。しかしながら「日々の生活の中でも、そうしたセンスを高めるための習慣を作ることは可能」だと奥部氏は言います。

「プレゼンに限らず、いろんなデザインを見て、自分が良いと思ったものをストックして『引き出し』を増やしていきましょう。われわれはデザインのプロではありませんが、良いと思ったものを溜めておき、必要なときにその中から、適切なものを取り出して、真似して作ってみるということはできるはずです。そうしたことを繰り返しながら、自分なりに良いと思うスタイルを作り上げていくといいでしょう。実はプロのデザイナーも、そうしたことを普段からやっているんです」

球技のスキルを高めるように「プレゼンスキル」を磨き続けよう

各受講生によるプレゼンと、それに対する奥部氏のコメントが終わったところで、今回の「プレゼンブートキャンプ」は終了。奥部氏より、ひとりひとりの受講者に対して「修了証」が手渡されました。

また、今回の講座の中で、特に目覚ましい成長があった受講生に贈られる「MVP賞」は、寺島ゆりかさんが受賞。奥部氏がアンバサダーを務める「Logicool Spotlight Wireless Presentation Remote」の新色「レッド」が、合わせて贈呈されました。

長期にわたった講座の締めくくりとして、奥部氏は受講生の努力をねぎらいつつ「今後も機会を見つけてプレゼンの練習を続けてほしい」と述べました。

「プレゼンは、野球やテニスのような球技に近いのではないかと思います。道具を渡されて、コートやバッターボックスに立たされても、初心者がすぐに良い球を打てるというものではありません。何度も素振りや練習を重ねるうちに、ようやく球がコンスタントに前に飛ぶようになってくる。そこからさらに実戦経験を積むことで、プレイヤーの個性が出てくるようになります。プレゼンも同じです。どうすれば上手く話せるか、伝えたいことが伝わるかを意識して練習をしなければ、上達はできません。今回のブートキャンプで、みなさんはその基礎をしっかり学びました。これからも、ことあるごとにプレゼンの練習、実践を通じて成長を続けて下さい」

今回の講座では、プレゼンに必要な「基礎力」と「度胸」を身につけたと同時に、起業に取り組んでいる女性同士の「つながり」が得られたことが貴重な機会だったと振り返っている受講者も多かったようでした。修了生たちの今後の活躍が楽しみです。

・講師

奥部 諒

東京大学大学院学際情報学府修士1年。これまでに、起業家、学者、アーティストなど多様な分野の人々のプレゼン作成に従事。そこで得た経験値を社会に還元するため、企業人、起業家向けにプレゼンセミナーを行うかたわら、東京大学において学問的アプローチからプレゼンを研究・考察する。人々の伝えたいことが適切な評価の土台に上がる世の中を目指している。

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