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【イベントレポート】ひたすら「プレゼン」のことを考え続ける2カ月間で彼女たちに起こる変化は?-女性起業家のためのプレゼンブートキャンプ~キックオフ~

2017年12月3日、既に起業している、あるいは、今後起業したいと考えている女性たちが「プレゼンテーション」のスキル向上を目指す実践型講座「女性起業家のためのプレゼンブートキャンプ」のキックオフミーティングが行われました。投資家やパートナー企業への事業説明、仲間の獲得、ピッチコンテストへの出場など、起業家にはプレゼンテーションを行う機会が多くあります。聴衆を引きつけ、伝えたいことを正しく伝えられるプレゼン能力は、起業家の必須スキルと言ってもいいでしょう。この講座では「プレゼンスキルを高めたい」という思いを持った受講生たちが、約2カ月間のハードなトレーニングに挑みます。

女性が今こそ「プレゼン力」を鍛えるべき理由

「女性起業家のためのプレゼンブートキャンプ」は、2017年12月から2カ月をかけて実施される「プレゼン力」の養成講座です。受講生は、12月3日のキックオフをスタートラインとして、2018年1月27日の「最終発表」までに、4日間の「実践練習」を行います。プレゼンをする立場と見る立場を入れ替えながら考える機会を通じて、より良いプレゼンを行うための基礎力の向上を目指します。

本講座の講師を担当するのは、東京大学大学院学際情報学府修士の奥部諒氏。奥部氏は、多くの起業家、学者、アーティスト、ビジネスマンに向けてプレゼン教育を行ってきた経験をベースに、学問的なアプローチによるプレゼン研究を手がけるようになったという、プレゼンのエキスパートです。

奥部氏は、今回のブートキャンプに先がけて、「なぜあなたのプレゼンは伝わらないのか」と題したセミナーを、11月13日と19日の両日にわたって行っています。セミナーは、プレゼン力を高めるための基本的な心構えを学ぶ「マインド編」と、より実際的なスライドの作成方法、情報の伝え方についてのコツを知る「スキル編」から構成されていました。

今回の「ブートキャンプ」では、このセミナーの内容を基礎として、受講者が与えられたテーマに基づいたプレゼンを行い、2カ月の期間中に、その内容をブラッシュアップしていくことが求められています。

本講座の受講者を「女性」とした理由について奥部氏は、女性の社会進出がかつてよりも進んだことで、聴衆の前で女性がプレゼンを行う機会が多くなっていることに加え、プレゼンの「トレンド」が、女性に有利なものに変化してきていることを指摘しました。

「近年、日本においても欧米型の、聴衆のエモーショナルな部分に訴えかけるようなプレゼンスタイルが徐々に浸透してきています。実は、この傾向は女性にとって有利です。女性は一般に、男性と比較して、言語以外の要素で感情に訴えるノンバーバル・コミュニケーションに優れているとされているためです。しかしながら、内容自体が乏しかったり、基本的なプレゼンの手法を知らなかったりするようでは、その優位性も十分に発揮できません。このブートキャンプでは、実践を通じて、それらを鍛えていくことを目指します」

受講生に課せられた「クレド」

趣旨説明の後、キックオフに出席した受講者全員による自己紹介が行われました。年齢は20代から50代。既に何らかの形で起業している人もいれば、会社に勤めながら起業を考えている人、主婦を経験した後に起業して再び社会で働きたいと考えている人、学生で就職以外に起業という選択肢を考えている人など、その年齢も背景もさまざまです。

全員の自己紹介が終わったところで、奥部氏からは「クレド(Credo)」が示されました。「クレド」は「信条」などと訳されますが、この講座においては「約束ごと」の意味であり、受講生は参加にあたって「クレド」の遵守が求められます。ここでは、奥部氏が挙げた「クレド」のうちのいくつかをご紹介しましょう。

・準備にしっかりと時間をとる

筆頭に挙げられたのが「準備を怠らないこと」です。奥部氏は「プレゼンは準備が8割」として、その重要性を強調します。

「実践型の講座をいろんなところでやっているのですが、プレゼンを作って発表してくださいと受講生にお願いをすると、良くて前日、ひどい場合は当日現場に来る前にはじめて取りかかるような人が、残念なことにとても多いのです。プレゼンを良いものにするにあたって、準備はとても重要です。必ず、時間をかけてください」

奥部氏は、ブートキャンプに先がけて行われたセミナーの「マインド編」でも、準備の大切さについて触れていました。製品発表会でのプレゼンが、毎回多くの聴衆を引きつけた、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズも、そのプレゼンの準備には、毎回3カ月以上をかけていたと言われます。また、多様なテーマでのプレゼンイベントを定期的に開催している「TEDカンファレンス」において、その発表者は約6カ月を準備に費やしているそうです。

「今回の受講生は、プレゼンを苦手だと感じている人がほとんどのはずです。それぞれに忙しいことは十分に分かっていますが、今回の講座に臨むにあたっては、あえて時間をとって準備することを求めます」

・自分が発表しない回にも必ず出席する
・他者の発表をクリティカル(批評的)に見る

今回の講座では、期間中に4日間の「実践練習」が行われます。そのうち、各自が発表を行うのは2回ですが、受講生はそのすべての日程に参加することを求められています。理由としては、他の人のプレゼンを数多く見ることで、学びの機会を飛躍的に増やせることが挙げられます。

同時に、他の人の発表を見る際には「クリティカル(批評的)」にその内容を吟味することを、奥部氏は求めました。

「プレゼンを見る際のポイントとして、ただ何となく『上手だった』『ピンとこない』と感想を持つだけではなく、なぜ自分は、そのプレゼンを見てそう感じたのかを考えてください。良い、悪いのどちらの印象を受けたにせよ、その理由について深く掘り下げることで、自分のプレゼンの質を高めるための気付きが得られます」

・人格批判禁止
・年齢、職業などによるマウンティング禁止

「これは当たり前のことなのですが」と前置きをしたうえで、奥部氏が挙げたクレドが上記の2つです。

「残念ながら、一般的な社会の中では、議論の中で相手の人格を攻撃したり、社会的なステータスを根拠にして相手の意見を批判したりというのは『よくあること』とされています。しかし、今回の講座ではこれらを厳しく禁じます。実践練習では、私からのフィードバックに加えて、他の参加者からもフィードバックを募りますが、その際、これらを根拠にした意見や批評は一切認めません」

加えて、講座の中で他者に対して意見を述べる際には「相手を尊重し、相手と自己、双方の成長を基盤にして発言すること」がクレドとして示されました。

聴衆を電器屋さんに走らせる「家電」のプレゼンを作れ!

キックオフの最後に、受講生には実践練習に向けたプレゼンのテーマが発表されました。

「家電製品のアンバサダーとなり、あなたのプレゼンを聞いた人が電器屋さんに走りたくなるようなプレゼンテーションをしてください」

取り上げる家電製品の種類は不問。スマートフォンやミュージックプレイヤー、PCなどのIT製品でも良いということです。テーマとして「家電製品」を選んだ理由について、奥部氏は以下のように説明しました。

「みなさんは、プレゼンを作る過程で、対象となる家電製品について知り、選択することになります。家電には膨大な種類があり、色やデザインなどに対する個人の好みもさまざまですが、実はそこが重要です。数ある製品の中から、あるものを選び出すというプロセスがあることで『自分はなぜ、それを選択したのか』という理由が明確になりやすいのです。また、家電には必ず何らかの機能が備わっています。機能について説明することで、聴衆に対して論理的にその製品の有用性を示すことができます」

家電選びには「好き」という感情的な要素と「機能」という論理的な要素が混在しますが、実はプレゼンにおいても同じような「要素の混在」が重要になると奥部氏は言います。

「相手に伝わるプレゼンには、感情に訴える要素と、論理的な裏付けの両方が混在します。その構造が分かりやすくなるという点で、プレゼンの練習テーマに家電製品は適していると思います」

実践練習で、発表者に与えられる時間は「5分」です。さらに奥部氏は「長すぎたり、短すぎたりしない『ちょうど5分』を目指すこと」を受講者に求めました。

「特に準備をせず、発表を時間ぴったりに収めるというのは、プレゼンに慣れた人でも難しいと思います。苦手意識を感じている人であればなおさらです。ただし、事前に練習をしておけば、不可能なことではありません。準備に時間をかけて『5分ぴったり』を目指してください」

受講生には、かなり厳しい課題が出されましたが、奥部氏はここで、最終発表後に「MVP賞」を選出することも発表しました。今回の講座の中で、特に目覚ましい成長を遂げたと判断された受講生には「MVP賞」として、奥部氏がアンバサダーを務める「Logicool Spotlight Wireless Presentation Remote」の新色「レッド」が贈呈されます。

現在の立場も、これまでの社会経験も異なるメンバーが、これから「プレゼンスキルの向上」という共通のテーマを掲げて2カ月間の鍛錬に挑みます。果たして、最終発表が行われる1月27日までに、彼女たちのスキルとマインドに、どんな変化が起こるのでしょうか。

・講師

奥部 諒 氏 / 東京大学大学院学際情報学府修士1年
これまでに、起業家、学者、アーティストなど多様な分野の人々のプレゼン作成に従事。そこで得た経験値を社会に還元するため、企業人、起業家向けにプレゼンセミナーを行うかたわら、東京大学において学問的アプローチからプレゼンを研究・考察する。人々の伝えたいことが適切な評価の土台に上がる世の中を目指している。

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