年齢に縛られない働き方をするため55歳で早期退職を選択しカウンセリングオフィスを開業。

 

55歳で退職し、カウンセリングオフィス岸井を開業した岸井謙児さん。自ら会社を辞めて自分が働く場を自分の力で作り上げることを選択肢に選びました。

 

岸井 謙児氏 プロフィール
1985年普通高校にて不登校・学校不適応生徒を対象に学校カウンセリングを始める。1995年特別支援学校にて、不登校・発達障害・被虐待児・摂食障害児などを対象に学校カウンセリングを実践。2007年聴覚特別支援学校にて、発達障害・聴覚障害児・被虐待児・学校不適応児などに対して学校カウンセリングを実践。2013年退職して「カウンセリング・オフィス岸井」を開業。同時に、中学校のスクールカウンセラー、大学の保健センターのカウンセラーとしても勤務。


スクールカウンセラーの経験を生かし、早期退職で55歳で起業

――起業を意識したのは何歳の頃ですか?

起業を意識したのは53~54歳の時です。退職まで待つと年齢を重ねてしまうので、早期退職をして55歳の時に起業しました。

私は30年以上、教員として発達障害児教育などに取り組み、また小・中・高校・特別支援学校のスクールカウンセラーとしても活動してきました。その経験を生かしたいと考え、2013年に「カウンセリング・オフィス岸井」を開設しました。

現在は、思春期、青年期の子どもが抱える不登校や、発達障害の問題を中心とした心理カウンセリングを行うほか、大人のうつ、職場不適応などにも対応しています。また、オフィスの運営と並行して、中学校や大学保健センターでカウンセラーとして働いています。


定年退職を待つより、自分の力を存分に発揮できる場を求めて

――起業のきっかけになった出来事はありますか?

私は組織の中でしか働いたことがなかったので、いつかは自営業者になりたいという夢を持っていました。人生は一度きり。一回かぎりだからこそ、自分の力を存分に発揮できる自営というスタイルで仕事に取り組んでみたいと思ったのです。

また、私よりも先に早期退職をして開業をした同世代のカウンセラーが、「まだ仕事に取り組む力が十分にあるのに、年齢だけで一方的に辞めさせられる定年退職は屈辱的だと思う。それなら早めに自分から辞めた方が、気持ちがすっきりする」と話していて、その言葉にも影響されました。実際、まだまだ働く力があるのに、一定の年齢に達したという理由だけで退職させられるのは非常に理不尽だと思います。

また、この頃に見た夢も影響しています。起業前にスキージャンプの夢を見たんです。気になって心理療法の一種である「夢分析(夢を読み解くことで、自分が望んでいることなどを把握する技法)」を使って分析しました。スキージャンプをして急斜面を滑降後、高く飛び立ち着地するという夢でしたが、「事業において長い時間をかけて助走し、やがて高くジャンプできる」という自分からの前向きなメッセージとして受け取りました。もちろん起業を決意した理由は他にもあるのですが、
夢は「自分から自分へのメッセージ」とも言われているので無視できないなと思いました。


収入の安定を図り、オフィス運営と並行して学校カウンセラーの仕事にも従事

――起業すると決めてからまず実践したことは何ですか?

実際に開業するという段階に入ると、きちんと収入が得られるかどうかが気になったので、まずは経済面の見通しを立てることにしました。

起業後すぐに満足できる収入が入るとは考えにくかったので、ビジネスの安定を他の仕事で図りたいと考えました。オフィスの運営と並行して、学校カウンセラーの仕事に就き、週の約半分を費やすことで定期的に給与をもらえる道を確保しました。

事務所を借りる必要があったので、家賃のことも考える必要がありました。どの程度の収入があれば事務所を維持できるかなども熟考し、学校カウンセラーの勤務日数と、オフィスを開業する日数を割り出しました。

また、開業したことを多くの人にお知らせしないと集客できないので、インターネットで情報発信を始めました。
起業を自己満足に終わらせないためにも、オフィスの運営についてはきちんと振り返りを行うことが大切だと考えていたので、数年取り組んでみて、「軌道に乗るか乗らないかを見極めよう」とこの時点で考えました。


家族への相談と人脈作りは必須

――起業前、ご家族に相談されましたか?

経済的な問題が発生すると家族に迷惑がかかりますので、生活費としてどの程度必要かなどを起業前に話し合いました。ビジネスで収益が上がらなくても、学校カウンセラーとしての仕事を確保しているので、当面は最低限の収入があることを伝えると安心してもらえました。

相談するとともに起業時に肝に銘じたのは、家族に迷惑をかけないことです。万が一でも、自分の夢のために借金を作り、家族に負担が及んでしまう可能性が少しでもある場合は、起業しない方が良いと思います。


――起業前に人脈作りなどに取り組みましたか?

私は職人タイプで、どちらかと言えば人脈作りは苦手としています。いろいろな場に顔を出して人と知り合い、活動の場を広げるといったことができないので、自分にできる範囲内でコツコツと良い仕事をして次につなげたいと考えています。しかし、人脈作りが得意な方は起業前に人脈を広げておいた方が良いと思います。


一人で仕事をする気楽さ、自由さが起業の魅力

――起業後のお仕事は楽しいですか?

自営のメリットは、一人で仕事をする気楽さ、自由さにあるので、その点においては楽しいですね。デメリットはやはり「収入が安定しないこと」と言えるでしょう。

しかし、私の場合、開業3年目を過ぎた頃から相談者が増えてきました。マイベストプロでコラムを書き続けたことも集客効果につながっているのではと分析しています。開業時の苦しかった時期と比べると、安定した状態を維持できていると思います。

収入ですが、学校勤務と自営業で得た収入を全て合算すると、サラリーマン時代と同程度になっています。まだまだ自営業1本に絞ることができない状態ですが、少しずつ売り上げも上がっているので、オフィスの開業日を増やしたいと考えているところです。


学校現場や障害児などのカウンセリングに関する知識や経験値が自分の強み

――ご自身の強みは何だと思いますか?

私は教員としての経験が長く、学校現場や障害児に関する知識や経験が豊富なことが自分の強みと考えています。しかし、病院勤務の経験がないので、薬の知識が少ないことが弱みで、その辺りの知識があれば良かったなと思うことはあります。

とはいえ、一人の人間があらゆる知識を備えるのはかなり大変なことです。あれもこれもと考えて、手を広げるのもいいと思いますが、私自身はさまざまな悩みを抱える人たちをサポートする力を着実に身に付け、自分の強みをさらに明確にしていきたいと考えています。

自営業者としては、目の前のクライアント、つまりカウンセラーであれば相談者の信頼を高めることが事業を継続させていくために欠かせない要素です。そして相談者の信頼を得るためには誠実に対応し続けることしかないと考えています。私は職人タイプの人間なので、これからも自分の身の丈に合った仕事にコツコツと取り組んでいきたいと思っています。


自分が本当にやりたい仕事に取り組めるのは、この上ない幸せ

――50歳以上の人へメッセージをお願いします。

私は勤めていた会社を、定年を待たずに退職して起業しました。定年を言い渡されたわけではなく、自ら早期退職を選んだからかもしれませんが、いまだに退職をしたという実感が湧いてきません。退職ではなく、転職してそのまま仕事を続けているといった感じの毎日を過ごしています。
早期退職をせずに最後まで勤め上げることも素晴らしいと思います。しかし会社を退職後、取り組む仕事がなくなり生きがいを失う方も少なくないと聞いています。そういった状態に陥るのであれば、自ら会社を辞めて自分が働く場を自分の力で作り上げることを選択肢の一つにするのも悪くないと思います。

そして、起業を視野に入れるのであれば、退職する5年ぐらいから前から準備に入り、じっくりと取り組むことをおすすめします。定年後も働く心構えをした上で、計画を立てて早めに準備することが大切だと思います。

人生100年時代と言われていますが、今の50代、60代、そして70代のみなさんもとてもお若いです。健康管理のため、たまにトレーニングジムに行くことがあるのですが、ジムが、体力維持に励む元気な同世代でいっぱいなので驚きます(笑)。健康で活力がある50歳以上が増えていることを実感する毎日ですが、反面、あり余る時間をどう使うかも、こういった世代の課題となっているのではないでしょうか。
その時間を使って、自分が本当にやりたかった仕事に取り組めれば、これ以上に幸せなことはないでしょうね。


【転載元】プロ50+

https://pro50plus.mbp-japan.com/

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