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【イベントレポート】 アフリカの課題を解決するために社会起業家にできることと「継続」の重要性 -世界を変える社会起業家のビジネスモデル ~ソーシャルベンチャー×アフリカ~

起業を支援する「Startup Hub Tokyo」では、さまざまなプログラムを実施しています。2017年11月8日には、NPO法人ポレポレ代表の高橋邦之氏がコーディネーターを務めるトークイベント「世界を変える社会起業家のビジネスモデル ~ソーシャルベンチャー×アフリカ~」を開催しました。

今回のゲストは、アフリカの民族柄や伝統の織などを使用したアパレルブランド「CLOUDY」を展開している銅冶勇人氏と、アフリカにおいて「配置薬」の仕組みを普及すべく活動しているAfriMedicoの町井恵理氏です。アフリカが抱えている貧困や医療の問題に、それぞれの方法でアプローチしているおふたりに、起業に至った経緯や具体的な取り組みの内容、その中で感じていることなどをお伺いしました。

NPOと株式会社の「ハイブリッド型」で取り組みを行う理由

銅冶勇人氏は現在、ガーナやケニアといった国々で子どもたちの教育支援、学校建設を行うNPO法人Dooooooooの代表理事と、アパレルブランド「CLOUDY」を展開する株式会社DOYAの代表取締役社長を兼任しておられます。

アフリカに起源を持つアスリートや音楽文化に学生時代から影響を受けていたという銅冶氏がNPOを設立したのは、証券会社に会社員として勤務していた2010年のことでした。しばらくは、本業としての会社員と、副業としてのNPO法人代表を掛け持って活動を続けてきましたが「NPOとしてやるべきことが広がっていく中で、次第に会社員としての自分と、個人としてやりたいことの比重が逆転していった」(銅冶氏)ことから、2014年11月に会社を退職。翌年、株式会社DOYAを設立し、アパレルブランド「CLOUDY」を立ち上げました。

CLOUDYでは、ガーナ、ケニアを中心としたアフリカ諸国に現地の素材やデザインを取り入れて縫い上げる「縫製工場」を設立。現地に雇用を創出すると共に、質の高い商品を通じて、消費者による「購入」というアクションを引き起こすことを目指しています。CLOUDYの売上によって生まれた利益は、NPO法人による現地での教育支援事業、学校建設事業に使われるため「NPOと株式会社によるハイブリッド型の運営スキーム」となっているのが特長です。銅冶氏は、このスキームを採用した理由として「継続させていくこと」の重要性を強調しました。

「日本において、NPOは『稼がない』ものだというイメージが強いと思います。しかし、寄付やアクションといった文化が根付いていない日本では、社会問題解決のために活動を行っているNPOでも、寄付だけで成立していくことは難しい。活動を継続させるという観点から、自分はNPOをビジネスとして捉えたいと思っています。ビジネスとして成立する事業を展開しつつ、その利益をNPOに投入していくことで、長期にわたって継続可能な活動につなげていく。それが、NPOと株式会社によるハイブリッド型のスキームを採用している理由です」(銅冶氏)

現地に設立した工場で商品が作れるようになるまでには、さまざまな困難があったといいます。その大部分は、アフリカの教育環境や風土に由来するものでした。

「たとえば『布を○○センチで切って』という指示を出したとしても、工場で働いている人たちは『センチメートル』という単位が分かりません。そこで、あらかじめ型を作っておき、そのとおりに切ってもらうというようなところから始めていきました。さらに、最終的な『検品』の重要さを理解してもらえず、スカートの中に針が残ったままだったり、作業に慣れてくると調子に乗って、Tシャツのポケットに指示していない刺繍を勝手に入れてしまったりする(笑)。それはそれで味があるのですけれど、残念ながら商品にはなりません。最初のころは、100枚作って、ようやく2、3枚ほど商品になるような状態からスタートして、徐々に質を高めていくということを続けてきました」(銅冶氏)

NPO事業としての学校建設は既に3校目にとりかかっています。こちらについても、現地の状況を注意深く観察しながら展開しています。3校目の学校としては、これまでの「私立」ではなく「公立学校」の建設を進めているそうです。その理由として、銅冶氏は「地域の人々が全員でがんばらなければ建設も運営も進まない学校にしたかった」からだと話します。

「寄付されたお金を投入して学校を作れば、その周辺に住む子どもたちの教育レベルは上げることができます。でも、お金を寄付されて、学校を作ってもらうことに慣れてしまうと、彼らを取り巻く大人たちが、社会を良くしていくことに対する意欲を減らしていくんです。あえて公立の学校を、現地の人たちと一緒に作っていく形にすることで、現地の人々の努力によって運営される学校を作っていきたいと考えました」(銅冶氏)

「遅刻は本当に悪いこと?」-現地の人々と接する中で芽生えた考え

こうした取り組みを続けていても、日本で生まれ育ってきた日本人の感覚からすると、驚くようなことは、アフリカで次々に起こるといいます。特に銅冶氏がショックを受けたのは、現地工場に導入したミシンを、工場に勤める女性が勝手に近所の業者へ売って、その代金を着服してしまった事件でした。

「この事件が起こった時、自分は何のために取り組みを続けているのかと、むなしい気持ちが沸き起こりました。でも、自分の中で考えていくうちに、彼女の行動は絶対に肯定できないが、もし、自分が彼女と同じ立場で生まれ育ち、今の環境に暮らしていたとしたら、完全に否定もできないのではないかと思うようになりました。結果として、その事件は、彼女のやったことを否定し、排除するのではなく、そういった行動を起こさせないためのルール作りをしようと考えるきっかけとなりました」(銅冶氏)

これ以外にも、「学校建設の工事に関わる人が、勝手に現場を休んでしまい、理由を聞いたら『神様が休んで良いと言った』と言う」「決められた始業時間に工場に人が集まらない」といったことは、日常的だといいます。こうした経験の中から得られた教訓として、銅冶氏は「常に立場を置き換えて考えてみること」「二人三脚で進んでいくこと」を挙げました。

「『工場の人が当たり前のように遅刻してくる』となると、経営者としては、遅刻をさせないようなルール作りをしなければと考えると思います。もちろん、それも大切ではあるのですが、アフリカでの活動を続けてきて『遅刻って、そんなに悪いことなのかな』と考えている自分もいることに気付いたんです。もしかすると、彼らが『時間を守らない』ということが、彼らのゆとりや、人間としての良い部分を生みだす要素のひとつになっているのではないか。もし、そうだとすれば、彼らのリズムをルールで縛らずに、彼らがそれぞれに、自分のやるべきことをやってくれれば、それでいいのかもしれない。僕らのルールは、僕らだけのものであって、アフリカの人たちには、彼らの歴史や文化の中で育まれたやり方がある。僕らのやり方を押しつけるよりも、お互いのやり方をうまくシェアしていく方法を考えることが大切なのではと、今では思っているんです」(銅冶氏)

銅冶氏はプレゼンテーションの中で、現地で撮影された多くの写真を披露しました。子どもたちが学校で学んでいる様子。工場で働いている女性たち。学校建設のために力を合わせて働く地域の人々。日本から贈られたボールでサッカーに興じている様子。そのいずれにも共通していたのは、写っている人たちの心からの「笑顔」でした。

アパレルのブランド名である「CLOUDY」は「曇り」という意味です。銅冶氏は、ブランドの立ち上げにあたって、コンセプトにネガティブな要素を加えたかったと言います。

「アフリカでは、今も多くの人々が病気や差別、戦争や貧困など、難しい現実と向き合っています。それでも、ご覧に入れた写真から分かるように、笑いながら日々を暮らしています。CLOUDYというブランド名には、たとえ今日が曇っていたとしても、それを爽やかな『晴れ』に変えていきたいという思いが込められています。CLOUDYの商品を手に取って下さった方に、少しでもそうしたアクションを起こしたという意識を持って頂くと同時に、そこから生まれた『笑顔』の連鎖を、アフリカへとつなげていけるようにしたいと考えています」(銅冶氏)

ボランティア経験で受けた「ショック」が起業に至るきっかけに

2人目のゲストは、NPO法人「AfriMedico」の代表を務める町井恵理氏です。AfriMedicoが活動しているタンザニアでは、医療サービスの不備から、下痢症疾患やマラリアといった病気で命を落とす子どもが、毎年18万人以上いるといいます。AfriMedicoでは、この課題を解決するために、日本の伝統的な「富山の置き薬」(配置薬)の仕組みを、現代のアフリカ向けにアレンジし、広めていくという活動を行っています。

町井氏は、薬学部の学生時代から海外ボランティアに参加していました。「医師等の資格を持っていなくても、助けを必要としている海外の人たちのためにできることがある」という事実を知り、卒業後もパートタイムでボランティアを続けますが、さらに活動に専念するため、青年海外協力隊に志願。ニジェール共和国で2年間、感染症対策のボランティア活動に従事します。ここでの経験が、アフリカでの医療を改善するために何をすべきかを深く考え、NPOの設立に至るきっかけになったと言います。

「青年海外協力隊としての活動では、主にマラリアやエイズといった感染症を防ぐための啓発教育に携わっていました。ニジェールでは、文字が読めない人たちに知識を伝えるために紙芝居を見せて回ったり、複数の部族の言語を使い分けてラジオを放送したりといった活動を行っていました。しかし、活動を終えて、現地の人たちにアンケートを行った結果を見てがく然としました。というのも『マラリアを媒介する原因となるのは蚊である』といった、本当に基本的な知識は約20%から約80%まで増えていましたが、その先の『蚊帳を購入したか?蚊帳の中で寝ているか?』という行動変容までは至りませんでした。『教育を行っても、実践に至らない』という現実にショックを受け、この状況を変えるために、自分に何ができるかを真剣に考えたいと思いました」(町井氏)

青年海外協力隊としての勤めを終えた町井氏は、グロービス経営大学院へ進学。「アフリカの医療改善」をテーマとして研究を開始します。ここでの研究をもとに大学院のメンバーと共に設立したのが「AfriMedico」です。

町井氏をはじめとするAfriMedicoのメンバーは、医療に関して、現在のアフリカ農村部が抱えている問題点について研究し、江戸時代の日本とのいくつかの共通点を見つけ出しました。それは「医療のためのインフラが未整備」「大家族」「皆保険制度がない」といったものです。日本において、その時代に有効に機能していた医療システムのひとつが「富山の置き薬」(配置薬)でした。

「日本で配置薬のシステムが機能していた理由を、富山の県庁にある歴史書なども頼りにして徹底的に調べました。結論として、医療費が高く、病院までのアクセスが悪く、薬そのものも多く流通していない地域において、必要な時に待ち時間なしに薬を使える配置薬は、現在のアフリカの医療が抱える課題を解決できるシステムになると考えました」(町井氏)

アフリカに「配置薬システム」を普及させ、医療環境を継続的に改善していくというミッションを達成するにあたって、町井氏らは配置薬システムを「アフリカ式」「現代式」にアレンジしています。例えば、日本の伝統的な「置き薬」は、その配置状況や利用状況が専用の帳簿で管理されており、その帳簿は各家庭や集落の状況に関するデータベースとしての役割も果たしていました。AfriMedicoでは、現地に存在する地域コミュニティ、企業、学校などに、置き薬を管理するステーションとしての役割を持たせ、そこで集められるデータをもとに、病気の重症化予防や医療費削減効果などに関する検証を行っていきたいとしています。また、アフリカでも広く普及している携帯電話を活用し、利用した薬の料金支払をオンラインで行える仕組みも採用しています。

「子どもが死にそうだから200円ちょうだい」-あなたはどうしますか?

町井氏は講演の中で、ソーシャルベンチャーとしての起業を考えている聴講者に、ニジェールでの自らの経験から、次のような質問を投げかけました。

「ある村のお母さんが、子どもを抱えて私のところに来て、こう言いました。『子どもが高熱で死にそうなの。日本人はお金持ちなんでしょう? 病院へ行きたいから、200円をちょうだい』。あなたは、どうしますか?」

この問いへの答えは、聴講者の中でも「あげる」「あげない」が分かれました。町井氏は、この状況に置かれたとき「あげない」という選択をしたそうです。

「もし、そこでお金をあげてしまったら、その母親は『子どもが病気になったら、他人からお金をもらって治療する』ことしか考えなくなってしまう。そして、もし、私がここから去って、別の日本人がボランティアにやってきたときにも、同じことを要求するようになるだろう。そう考えて、私はあげない選択をしました」(町井氏)

そして、次に町井氏がその村を訪れたとき、その子どもは亡くなっていたのだそうです。

「あの時の選択が正しかったのか、いまだに自分の中で答えは出ていません」と町井氏は言います。しかし、この経験が、一時的にお金を渡すことによるサポートも重要ながら、それ以上に、現在アフリカが抱えている課題を解決し、継続的に改善をし続けられる仕組みを作っていくことが重要だと感じた、大きなきっかけになったそうです。

「こうしたことは、ボランティアの多くの現場で、今も起こっています。私が今も考え続けている、この問いを通じて、社会起業家のみなさんが、課題解決の持続可能性、継続性について考えるきっかけになればと思います」(町井氏)

AfriMedicoでは、まずはタンザニアから取り組みをスタートし、現地の人々からも意見を集めながら、より実効性のある医療環境の改善、知識啓発を目指して活動を行っています。また、NPOのゴールとしては、国連で2015年に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」が掲げている「すべての人に健康と福祉を(目標3)」「質の高い教育をみんなに(目標4)」の達成を果たすべく、活動を広げていきたいと述べました。

・ゲスト

銅冶 勇人 氏 / NPO法人Doooooooo代表理事、株式会社DOYA代表取締役社長
1985年生まれ、慶應義塾大学経済学部卒業。ゴールドマン・サックス証券株式会社(以下、GS)金融法人営業部入社。社会人3年目の2010年11月に特定非営利活動法人Dooooooooを設立。ケニアのスラムに住む子どもたち600名の教育、雇用支援を開始。2015年に7年務めたGSを退社。同年に株式会社DOYAを設立。アフリカでの雇用創出を目的としたアパレルブランド「CLOUDY」を創設。2015年からは、ガーナ・ボルタ地方で学校建設プロジェクトを始動。2017年度中の開校を予定。

町井 恵理 氏 / 薬剤師、NPO法人AfriMedico代表理事
青年海外協力隊としてアフリカのニジェール共和国で、2年間感染症対策のボランティア活動に従事。現地での経験からどうすればアフリカの医療をさらに改善できるか考え続け、グロービス経営大学院へ進学。「違いがあるからこそ共に学ぶものがある。アフリカと日本の両方を良くしたい」という想いから、AfriMedico設立に至る。2014年 TOKYO STARTUP GATEWAY 最優秀賞受賞。ICNet社主催「40億人のためのビジネスアイデアコンテスト」でファイナリストに残る。 2016年に人間力大賞受賞。また、Forbes JAPANより「世界で戦う日本の女性55人」に選出される。

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